【連載:第4回】加盟金の不返還条項

■はじめに

フランチャイズではFC契約の締結時にフランチャイジーから本部(フランチャイザー)へ“加盟金”(イニシャル・ロイヤリティ)が支払われ、開業後には毎月ロイヤリティが支払われるという形態が一般的です。
他方で、FC契約の締結時には、店舗を構える予定のエリアを定めておくだけで具体的な店舗までを特定せず、契約の締結後にフランチャイジーの責任で営業店舗を探すといったケースが散見され、加盟金こそ支払ったものの開業する前にFC契約を解約するというケースが想定されます。

では、フランチャイジーが希望エリア内でイメージ通りの店舗を見つけられず開業に至らなかった場合に、FC本部に支払った加盟金を取り戻すことができるのでしょうか?

この記事では、加盟金不返還条項が定められたFC契約で、フランチャイジーが店舗を探すことができないなどの理由で開業前に解約した場合に加盟金の返還を求めることができるかという問題について簡単に説明します。
なお、FC本部の説明義務違反などを理由にFC契約が解除される場合に、フランチャイジーがフランチャイジーから加盟金を取り返せるかという点は本記事の対象外となりますのでご留意ください!

■ “加盟金不返還条項”の内容とその有効性について

● 加盟金不返還条項とは?

まずは、加盟金(イニシャル・ロイヤリティ)の不返還条項というものがなんであるのかについてです。

FC契約では、フランチャイジーがFC本部に対して“加盟金(イニシャル・ロイヤリティ)”を支払うのが通常です。
そして、この加盟金について、以下のような条項が定められる場合がほとんどです。

フランチャイジーは、加盟金(イニシャル・ロイヤリティ)が、本フランチャイズシステム契約の締結後においては、本契約の中途解約、契約期間満了その他いかなる場合にも返還されないことを確認する。

このように、フランチャイジーがFC契約を締結するにあたってFC本部に支払った加盟金(イニシャル・ロイヤリティ)が「返還されない」ことを確認する条項を「加盟金不返還条項」と呼びます。

● 加盟金不返還条項の有効性

では、加盟金不返還条項は有効なのでしょうか。
特に、本件で問題として取り扱っているようにフランチャイジーが店舗を見つけられずに開業前にFC契約を解約したという場合にまで、加盟金の返還を認めないというのは不合理であるようにも思えます。

結論を先にいってしまえば、加盟金不返還条項は原則として有効であると考えられています。

フランチャイザーはFC契約の締結後にフランチャイジーに営業マニュアルを交付したり、開業前研修を実施したり、蓄積されたデータに基づく物件情報を提供したりすることになります。
これらフランチャイザーからフランチャイジーへ提供される情報には”営業秘密”が含まれています。
また、フランチャイジーはフランチャイザーから使用を許された商標等を用いてアルバイトを募集したり、店舗物件を探したりもします。

このように、フランチャイジーはたとえ開業前であっても、マニュアルや開業前研修等を通じてフランチャイザーの事業の貴重な情報を提供してもらえたり、商標を用いて開業準備を行ったりしてもらえるのが実際のところです。
この他、フランチャイザーとしては、フランチャイジーが出店を予定しているエリア内やその周辺地域において新店舗の開店や新規の加盟店開発を断念せざるを得ないため、FC契約を締結した段階で営業機会を損失しているとも捉えられます。

このため、フランチャイジーが開業前後を問わず加盟金の対価を得られる点、また、フランチャイザーの営業秘密の漏洩防止や営業機会の損失を補填する必要がある点などから加盟金不返還条項を定めることには合理性があり、原則として有効であると考えられているのです。

■ 加盟金を返してもらえることは絶対にない!?

● 原則として返還請求は不可

では、一度支払った加盟金は、いかなる場合にも返還されることがないのでしょうか。

さきほどの説明のとおり、加盟金不返還条項には合理性があるため原則として有効です。
このため、加盟金不返還条項が定めれたFC契約では、たとえフランチャイジーが開業・営業していない場合でも、支払った加盟金をFC本部から返してもらうことはできません

● 例外として加盟金返還が認めらるケースもある!

もっとも、加盟金不返還条項が有効であるのは、あくまでも合理性が認められるからです。
これは裏を返せば、たとえ加盟金不返還条項が設けられていても、“加盟金を返さないことが不合理といえる場合”には、加盟金を返還すべきと考える余地があることを意味します。

すなわち、フランチャイザーがフランチャイジーに対して加盟金の対価として相当な情報等を提供しなかったり、開業前研修といった開業に向けたサポートが全く実施されなかったりする事案では、加盟金の額やフランチャイザーから提供された情報・開業サポートの程度等を総合的に勘案して加盟金額が「著しく対価性を欠く場合」等には、その一部が返還される可能性があるのです。

■ まとめ

  1. 加盟金不返還条項は原則として有効!
  2. 加盟金が不相当に高額であるなど著しく対価性を欠く場合には、当該加盟金不返還条項が公序良俗に反して無効とされ、加盟金の一部の返還が認められる!

加盟金額が「著しく対価性を欠く」かどうかは、さまざまな事情を勘案して事案ごとに判断されることになります。
FC契約締結後に本部が物件情報や事業計画などの秘匿情報を提供したか否か、開業前研修等の実施状況、使用を許諾された商標が商標登録されているか否かといった事情を詳細に確認・検討する必要がありますので、専門家へ相談されるよう推奨します!

執筆者: 弁護士 内藤皓太

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