【国際法序論その2】「国家承認」について

1 前回のおさらい

前回は、「国家」とは何かについて説明をいたしました。

「国家」であるためには、①(永続的な)国民、②(一定の)領域、③主権(=政府)が必要であり、④他の国家と関係性を作ることができる必要があります。

2 国家として他国から認められるための条件

では、「国家」は、自称するだけで「国家」となることができるのでしょうか?

例えば、「①無人島に100人で永住する、②その無人島は、きちんと、土地が存在している、③移住した100人で選挙をして、代表者を選出してその代表者が政治を行う、④100人の中から、誰かが外交官になって、他国と交渉をするし、無人島に住む100人は、大使館をその無人島に設置することも問題ないと考えている。」という場合、①国民、②領域、③主権のいずれも存在し、④他国との関係性の構築も可能そうです。

しかし、このような集団や領域を「国家」と呼ぶのには、違和感があるのではないでしょうか?

国際法上、国家として認められるためには、ある集団が国家を自称するだけでは足りません。他の国から国家として扱われる必要があります。

そして、他の国がある集団、領域を国家として認めることを「国家承認」といいます。

先に述べた無人島の例では、その無人島を「国家」として認めることはないでしょう。そのため、先に述べた無人島は、いかに「国家」を自称したとしても、国家承認を受けられないため、国際法上、国家として扱われることはないでしょう。

3 国家承認の方法

では、ある集団、領域を国家として承認するためには、どのような方法があるのでしょうか?

国家承認の方法は、2種類存在します。

すなわち、明示の承認黙示の承認です。

①明示の承認

明示の承認とは、文字通り、「承認の意思をことばで表明すること」(「現代国際法講義第4版」杉原高嶺ら・46頁)をいいます。

例えば、日本は、南スーダン共和国を「平成23年7月9付けで国家承認する」旨の閣議決定を同月5日に行っています。

※当時の松本剛明外務大臣が、平成23年7月5日の会見で、「本日(引用者注:平成23年7月5日)の閣議において、7月9日に独立する予定の南スーダン共和国について、我が国として、同日付で国家承認をする旨の決定を行いました。これを受けて、菊田大臣政務官に7月9日にジュパで行われる予定の南スーダン共和国独立式典に出席してもらう予定にいたしております。」(「外務大臣会見記録(要旨)(平成23年7月)」(外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/gaisho/g_1107.html))と述べています。

まさに、ことばで、南スーダン共和国を国家として承認するということを明示的に表明しています。

②黙示の承認

黙示の承認とは、「一定の行為によって間接に承認の意思が推認される場合」(「現代国際法講義第4版」杉原高嶺ら・46頁)をいいます。

ことばで国家であることを明示的に認めるという行為をせずとも、当該集団や領域に関して、国家であることを前提にした行為をすれば、これも国家承認です。

例えば、当該集団、領域について、国際連合加盟の共同提案国となった場合には、その集団、領域について、国家であることを前提とした行為を行っているといえるでしょう(翻っていえば、国家でない集団や領域について、国連加盟をすすめるようなことはしないのが普通ですよね?)。

日本がこの方式で承認した例としては、ブータン王国があります。

外務省のホームページを見ると、「1971年9月国連にてブータンの国連加盟の共同提案国となったことにより、我が国は同国に対する黙示の国家承認を行った。」(「ブータン王国(Kingdom of Bhutan) 基礎データ」(外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/bhutan/data.html))とあります。

4 まとめ

以上のように、国家として他国から認められるためには、明示の承認又は黙示の承認によって、国家承認がなされる必要があります。

ちなみに、令和5年2月16日現在、日本が国家承認している国は、195か国あります(「世界の国数」(外務省ホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/comment/faq/area/country.html))。

 

関連記事

  1. 【国際法序論その1】「国家」について

  2. 【国際法序論その3】「外交特権」について