■はじめに
『連載:2021年航空法改正によるドローン・ビジネス法務』の第1回では,航空法の改正により,飛行リスクに応じたカテゴリーが3つに分類されることについて解説し,各カテゴリーで要求される飛行条件について簡単に触れました。
連載第2回となる本記事では,カテゴリーⅡで求められる飛行条件を参考に,改正法で初めて導入されることとなる「ライセンス制度」について解説します。
■カテゴリーⅡと改正法における飛行条件
カテゴリーⅡとは,「特定飛行」の場合であり,かつ,「第三者立入措置が施されている」場合です。
特定飛行の意味については,連載第1回をご参照ください。
この区分に属する飛行をする場合,現行法では飛行毎に個別の許可・承認が必要とされています。
もっとも,飛行毎に個別の許可を要するとしてしまうと,手続が面倒であり,ドローンの利活用を図る政策に支障を来しかねません。
そこで,現行法において承認・許可の件数が圧倒的に多い以下の空域・方法については,別審査を不要とする仕組みがつくられることとなりました。
<飛行空域> 「DID」(人口集中地区) |
<飛行方法> 「夜間」 「目視外」 「(人や物から)30m未満」 |
逆にいえば,これ以外の空域,方法での飛行をする場合には,従前どおり,個別の審査を要することとなります。
カテゴリーⅡにおいて,個別審査を不要とする範囲は以下の青い部分,改正法施行後も従前どおり個別審査を要する範囲は以下の黄色い部分となります。
※カテゴリーⅢは人の上空を飛行することが想定され危険性が非常に高いことから,例外なく個別審査を要することとなります。
このように,カテゴリーⅡの一定の飛行の場合には,個別審査を不要とするわけですが,当然のことながら,ドローン飛行により人や物に危害が加えられる危険性もあります。
そこで,個別審査を不要とする仕組みとする前提として,安全性を保障するための制度として導入されることとなったのが「操縦ライセンス制度」です。
(なお,機体そのものの安全性を保障する制度として「機体認証制度」も導入されますが,本記事では割愛します。)
■操縦ライセンス制度
操縦ライセンス制度とは,ライセンスを得たい者が申請をして,「無人航空機操縦者技能証明」(以下「技能証明」といいます)を得る制度です。
ライセンス申請者は,身体検査・学科試験・実地試験を受けて,合格すれば技能証明を得ることができます。
これらの試験に合格すれば,ドローンを安全に飛行させるために必要な知識,能力を有していることが証明されることとなるのです。
ライセンスは1等と2等に分類されており,カテゴリーⅢでは1等が,カテゴリーⅡでは2等が要求されています。
■ドローン・スクールの活用
技能証明の制度の導入に伴い,「登録講習機関」制度も始まります。
ライセンス申請者は,原則として,身体検査・学科試験・実地試験の全てを受験する必要がありますが,登録講習機関がおこなう講習を受けて修了すれば,実地試験が免除されることとなります。
なお,「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」では,令和3年6月28日時点では学科試験についても一部免除される方向となっていましたが,令和4年8月3日時点の最新の議事においては,実地試験のみが免除されることとなっています。
■まとめ
以上のとおり,カテゴリーⅡでは,
①DID
②「夜間」
③「目視外」
④「(人や物から)30m未満」
の場合には,個別審査が不要となります。
一方で,安全性を保障する制度として「操縦ライセンス制度」が導入されています。
ライセンスの等級やドローン・スクールを利用する場合の留意点を本記事でご理解いただければ幸いです。
カテゴリー毎に要求されるライセンスの等級が異なりますので,ドローン・スクールを受講する場合にはご留意ください。