【連載】キャッシュレス決済―第4回:クレジットカード決済

■はじめに

本連載では、「キャッシュレス決済」に関する法令について解説しています。

弁護士Aが日常業務において遭遇した法的問題を解決するという設定で解説していますので、関連法令に関する知識だけでなく、法的思考についても参考としていただけると幸いです。

今回は、前回に引き続き、Zさんが開業を予定しているエステサロンでの料金回収方法が“割賦販売法”の規制対象かどうかについて解説します。

■ストーリーのおさらい

弁護士Aは、Zさんから、エステサロン経営に関わる法務について相談がしたいと話を持ち掛けられていました。
Zさんが開業を予定しているエステサロン事業のシステム、料金は、おおむね以下のとおりです。

① 脱毛やフェイシャル・ボディエステを中心とした総合エステサロンを展開する
② 料金は、各コースで施術部位と実施回数で区別して設定することとし、複数回の利用料金を支払ってもらう場合には1回あたりの施術料が割安となるように料金設定を行う
③ 施術コースと利用回数によっては30万円を超える費用を要するものもあるため、分割払いに対応する予定
④ 支払はクレジットカード対応かつローン対応

■「割賦販売法」で規制される支払いの方法

割賦販売法では、

① 割賦販売業者が
②(割賦販売法で定める)「商品」や「権利」や「役務」を
③(割賦販売法で定める)「割賦販売」の方法で販売・提供する場合

に、消費者を保護するための規制が設けられています。

そこで、(論点1:)相談者Zが想定しているサービスが割賦販売法で想定されている「権利」や「役務」に該当するのか、(論点2:)相談者Zが想定する分割払いが割賦販売法で規制される「方法」にあたるか、について検討する必要があります。

Zさんが提供するエステサービスが割賦販売法の「指定権利」「指定役務」に該当することは、前回の記事で説明したとおりです。

今回は、論点2:割賦販売法で規制される支払い方法にについて解説します。

■割賦販売法で規制対象となる支払方法

● 「割賦販売法」で規制される支払いの方法は、主に以下の3つに分類されます。

①分割払い→2か月以上、かつ、3回以上の分割払い

②ローン提携販売→2か月以上、かつ、3回以上の分割払い

③信用購入あっせん(クレジットカード払い)→2か月を超える期間での返済

特に、本連載では「キャッシュレス決済」に焦点をあてていますので、③クレジットカード払いを利用する場合に限って説明します。

 

●クレジットカード払いの仕組み

一般に、エステ店がクレジットカード決済に対応するには、いわゆるクレジットカード会社(アクワイヤラー)との間で加盟店契約を結んだり、決済代行サービス会社と契約を結んだりする方法が考えられます。

いずれの方法をとる場合でも、エステ利用者がエステサービスを受けることを条件に、クレジット会社がエステ店に料金を立替払いし、利用客が当該代金をクレジット会社に2か月を超えて支払う取引をする場合には、割賦販売法の規制の対象となります。

■規制の内容

加盟店には、割賦販売法上、利用客に対してカード利用時に情報提供をする義務、クレジットカード番号の適切な管理義務、不正利用防止義務といった責任が生じます。

このため、利用客との契約時に必要十分な情報をいかなる方法で伝えるか、また、決済代行サービス業者を利用する場合には、クレジットカード番号保管や不正利用防止策に関する約定がいかなる内容になっているかといった点に留意するべきでしょう。

特に、加盟店の情報セキュリティが脆弱であるが故になりすまし被害が生じる可能性があり、これによりカード会社からの損害賠償請求やチャージバックの要求を受けるケースが想定されます。

この他、レピュテーションリスク管理の観点からも、クレジットカード決済を導入する際には情報セキュリティ対策を十分に講じるべきです。


執筆者: 弁護士 内藤皓太

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