■ はじめに
近時、離島やへき地において十分な医療を受けられないという社会問題について、映画やドラマを通じて問題提起されているところです。
この問題は昔から議論されていますが、技術の進歩により、複数の解決策が提案されています。
そこで今回は、「ドローンによる医薬品の配送業」について関連する法規制を簡単に説明します。
■ 医薬品の種類と法規制
医薬品を取り扱う際に留意すべき法律といえば、第一に”医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律”です。
一般に、”薬機法(やっきほう)”とよばれる法律です。
薬機法上、「医薬品」は以下の3つに大別されています。
①薬局医薬品(医療用医薬品及び薬局製造販売医薬品(毒薬又は劇薬であるものに限る。))
②要指導医薬品(医師等が交付する処方箋は不要だが、薬剤師が対面で服薬指導を行うことが義務付けられた医薬品。)
③一般用医薬品(①及び②以外の医薬品)
上記のうち①薬局医薬品と②要指導医薬品については、薬剤師が、対面により必要事項の記載された書面を示して薬に関する情報を提供しなければならないとされています(薬事法36条の4、同法36条の6)。
今の技術及び制度では、ドローンに薬剤師を載せて薬剤を運ぶということができず、薬剤師が対面で薬の説明をすることができないため、①薬局医薬品と②要指導医薬品をドローンで配送することはできません。
※なお、薬機法の改正により、医師等が出す処方箋により調剤された薬剤は、対面ではなく、オンラインでの服薬指導ができるようになりました。
これにより、オンラインで服薬指導を実施することを前提にドローンでの薬品配送も可能となっていますが、この点は割愛します。
以下では、③一般用医薬品をドローンで提供する場合に関する説明となります。
■一般用医薬品のドローン配送
一般用医薬品は、薬局以外の場所にいる方にも販売することができます。
そして、配送方法にも特段の制限が設けられていないため、薬の品質に影響を及ぼさない限り、ドローンでの配送が可能です。
ドローンを用いた薬品配送について、「ドローンによる医薬品配送に関するガイドライン」が公表されています。
主に、①当該薬剤の品質確保、②患者本人への速やかで確実な授与、③患者のプライバシー確保といった観点から、留意すべき事項がまとめられています。
また、ドローンを飛行させるためには、薬機法の規制だけでなく、航空法の規制にも従わなければなりません。
特に、離島やへき地へドローンを配送する場合には、目視外飛行や人口密集地域の上空を飛行させるケースも想定されます。
本連載でも説明してきたとおり、改めて、”レベル4の 飛行に必要とされる条件について十分に理解する必要があります。
なお、目視外飛行や人口密集地域でドローンを飛行させられのかという点については、「【連載】2021年航空法改正後のドローン・ビジネス法務」で解説しています。
■ まとめ
●一般医薬品は、ドローンで配送することが可能
●医師等の処方箋により調剤された薬剤はオンライン服薬指導が可能となり、ドローン配送も行える
●航空法の規制に従った飛行方法による配送が必須