■ はじめに
本連載では,主に,ドローンを飛行させる際の条件やドローンを利活用したビジネスにおける法規制などについて解説をしてきました。
今回は少し視点を変え,2021年航空法改正により導入された「登録講習機関」の位置づけ等ついて簡単に説明します。
ドローンの操縦ライセンスの取得を希望されている方にとって,登録講習機関で講習を受ける意味やメリットを理解する一助となれば幸いです。
■ 登録講習機関とは
ドローンに関する知識や操縦技術を学ぶ機関(ドローンスクール)は,航空法が改正されるよりも前から,いくつも存在します。
改正航空法では,既存のドローンスクールのノウハウや人材などを有効活用し,操縦ライセンスの発行業務を円滑に進める目的から,国土交通大臣の登録を受けたドローンスクールを「登録講習機関」とし,その卒業生には,ライセンス取得のための国家試験を一部免除するとの特典が与えられる制度が設けられています。
■操縦ライセンスの取得ルート
そもそも操縦ライセンスを取得するためは、国家試験に合格しなければなりません。
反対にいえば,国家試験に合格しさえすれば,ドローンの操縦ライセンスをとることが可能です。
ライセンス取得までのルートは以下の3つが考えられます。
① ドローン・スクールを利用しないで国家試験を受ける
② 登録講習機関として登録されていないドローンスクールを修了して,国家試験を受ける
③ 登録講習機関として登録されているドローンスクールを修了して,国家試験を受ける
操縦ライセンスを取得するのに,ドローンスクールに通うことは条件とされていません。
繰り返しになりますが,国土交通省の操縦ライセンスを取得するための試験に合格しさえすれば,当然,操縦ライセンスを取得できます。
では、ドローンスクールに通う意味はどこにあるのでしょうか。
■ドローンスクール利用のメリットと留意点
●国家試験の科目
操縦ライセンスを取得するには,
①学科試験
②実地試験
の両方に合格しなければなりません。
(身体検査もありますが,割愛します)。
学科試験ではドローンを安全に操縦するために必要される知識が試され,また,実技試験では技能が試されることとなります。
学科試験については,国土交通省のウェブサイトで試験科目が掲示され,また,「無人航空機の飛行の安全に関する教則」という教科書のようなものも掲載されているため,ご自身で学習を進めることも可能です。
他方で,実地試験については,実際にドローンを用いて操縦の練習を重ね,操縦技術を体得しなければなりません。
実地試験の実施要項が国土交通省のウェブサイトに掲載されていますが,合格基準を満たす操縦ができているかという点については,試験内容を正しく理解している第三者に,自身が飛ばすドローンの動き等を観察してもらい,確認する必要があるでしょう。
なお,ドローンは「回転翼航空機(マルチローター)」や「回転翼航空機(ヘリコプター)」に分類され,また,実地試験の合格基準も「一等」か「二等」かの違いにより詳細に定められています。
このように,例えドローンスクールに通わなくても操縦ライセンスを取得することが制度上は可能ですが,実際には高い障壁があるように思います。
●登録講習機関に登録されたスクールを利用するメリット
では,一般のドローンスクールと登録講習機関との違いはどこにあるのでしょう。
結論からいえば,国家試験の「実地試験」が全て免除されるか否かという点に差があります。
登録講習機関が提供するプログラムを修了して卒業すれば,実地試験が免除されるということです。
この点、登録講習機関として登録されていないドローンスクールを卒業しても,国家試験の実技試験が免除されません。
その分,価格設定やフォローアップなどが充実しているスクールもあると思いますが,仮に,スクール受講の理由が実地試験の免除にあるということであれば,スクール選択の際に十分にご留意ください。
■ まとめ
●操縦ライセンス取得のための国家試験の科目は①学科試験②実地試験である。
●ドローンスクールに通わなくても,①②のいずれにも合格すれば操縦ライセンスを取得できる
●登録講習機関に登録されたドローンスクールを卒業すれば実技試験が免除される
※登録講習機関に登録されていないドローンスクールを卒業しても実地試験は免除されないため,スクール選択に際して十分に留意する