【連載:第2回】フランチャイズ契約書の留意点

■ ”ひな形”の使用はリスク大!

● 契約書は重要な書面

契約書とは、契約の当事者が実行すべき内容や禁止事項が記載されています。
そして、契約当事者は契約書に記載された内容に法的に拘束されることとなるため、とても重要な書面です。

特に、フランチャイズでは、数多くのフランチャイジー(加盟店)との間でほぼ同じ内容の契約を交わすことが想定されるため、初期の段階から“きちんとした”契約書を作成することがとても重要となります。

● ”きちんとした”フランチャイズ契約書とは?

インターネットで「フランチャイズ契約書」と検索すると、フランチャイズ契約書のひな形や書式をみることができます。
しかし、これらのひな形を使用して、加盟金(イニシャル・フランチャイズ・フィー)や月ごとのロイヤリティの金額だけを変更すればよい、とお考えならばとても危険です。

ひな形には典型的なフランチャイズ契約書に記載するべき事項が網羅されてはいるものの、必ずしも各々の会社の体制やビジネス・モデルに合致した規定が置かれていません。

例えば、「テリトリー権」(特定のフランチャイジーが出店している地域において排他的かつ独占的な営業を行う権利を指し、他の加盟店は同地域内に出店できないこととなります。)を付与する内容のひな形を使用したとします。
フランチャイザーの本意としては、テリトリー制など採用するつもりはなく、むしろ特定の地域に集中して加盟店舗を出店して競争優位性を確保する戦略(「ドミナント戦略」)をとりたいという場合には、真逆の契約内容となってしまうこととなります。

また、ネット上で拾える”ひな形”の中には、フランチャイズ契約における最低限の条項すら盛り込まれていないものもあります。

このように、自社の体制やビジネス・モデルを反映していなかったり、本部又は加盟店の立場から規定しておくべき条項が盛り込まれていない契約書では、ビジネスを行う上で心許ありません。
反対にいえは、“きちんとした”契約書とは、自社の体制やビジネス・モデルを正確に反映した契約書であるといえるでしょう。

極端にいえは、フランチャイズ契約の内容は、十人十色です。
どうしてもフランチャイズ契約書のひな形を使用しなければならない場合には、そのメリット・デメリットを十分に検討するようにしてください。

■ ”収益構造”を契約書に落とし込む!

フランチャイズ契約はライセンス契約の一種とされ、一般に、フランチャイザー(本部)の商標やビジネスノウハウの使用権(ライセンス)をフランチャイジーに付与する対価として、フランチャイジーがライセンス料として加盟金やロイヤリティを支払うものと理解されています。

もっとも、フランチャイザーの主たるマネタイズポイントが、ライセンス料以外の点にある場合もあります。

例えば、他者が製造する商品に自社ブランド・ロゴを入れて販売し、フランチャイジーには同ブランドと商品の使用権を付与するビジネス・モデルでは、自社のブランドやロゴを使用させる対価(ライセンス料)だけでなく、「販売差益」も重要な収益源となります。
このため、フランチャイザーの立場からすれば、商品の受発注の頻度や値決めの方法に関する規定が必須となります。

この他にも、情報システムそれ自体に価値がある業態では「システム利用料」として、また、資金力のないスキル保有者に自社ブランドの使用と店舗を貸し出す代わりにライセンス料に加えて「店舗の転貸料」をロイヤリティ名目で徴収する例などがあります。

このように、自社のマネタイズポイントを正確に反映し、かつ、それに応じて予め決めておくべき事項を盛り込んだ契約書を作成することも重要です。

■ FC加盟希望者に契約書を示すべき時期はいつか?

ここまで、フランチャイズ契約の中身に関する注意事項について説明してきました。
最後に、フランチャイズ契約書は”いつ”加盟希望者に示すべきなのか?という点に簡単に触れておきます。

フランチャイズ契約書を示す時期は、フランチャイザーがフランチャイジーに負う「説明義務」との関係でとても重要です。

フランチャイザーの立場からすれば、フランチャイズ契約書には自社のビジネスモデルなどが詳細に記載されているといった理由もあり、契約締結時までできる限り示したくないというのが本音のようです。
他方で、フランチャイジ-からしてみれば、いくら事前説明会等で説明を受けたとしても、実際の契約書を見てみなければ、加盟後にすべきこと、してはいけないことといった契約の詳細を知ることはできないため、できるだけ早い段階で契約書を見たいところでしょう。

では、契約締結前いつまでに契約書を示せばよいのでしょうか。

これには法律に答えが書かれているわけではありませんが、一般的には遅くとも契約締結の1週間前までに示すべきとされています。

ただし、1週間前までの開示しておけば説明義務を果たしたといえるわけではないので、注意が必要です。
説明義務に違反したかどうかは、特定の業態で開示が義務付けられている「法定開示書面」又はこれに類する書面の記載内容や開示の有無・時期、事前説明会で配布する資料の記載内容、加盟希望者の知識・経験値といった事情を加味して総合的に判断されます。

このため、事前説明に用いる資料や説明の方法、法定開示書面の内容と開示の時期など、フランチャイズ契約を締結するまでに提供した情報を記録化し、かつ、スケジュール管理を徹底することを推奨します。

■ まとめ

  1. フランチャイズ契約の中身は十人十色!自社の体制やビジネス・モデルを正確に反映した契約書を作成するべき!
  2. 自社のマネタイズポイントを正確に反映した契約書を作成することも重要!
  3. 契約書は遅くとも契約締結の1週間前までに示すべき!

第3回目以降の記事では、フランチャイザーが加盟店に対してFC事業の説明を行う際に注意すべきポイント(説明義務の範囲)、FCにおける競業避止義務の考え方、業種別のFCの留意点、などについて、順次解説する予定です。

 


執筆者: 弁護士 内藤皓太

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